中山グランドジャンプを現地観戦するのは2019年以来3年ぶりだった。
2年前は無観客開催、昨年は指定席のみの発売と巡り合わせが悪く行けずじまい。
今年は運よく入場でき、現地で競馬を楽しんできた。
オジュウチョウサンと同じ位置にサトノパシュートがいた時、これはやったんじゃないかと一瞬だけ思った。あくまでも一瞬。
外回りコースに出てきたときにはオジュウチョウサンが先行集団にいた。ケンホファヴァルトは少しきつそうだ。
中山グランドジャンプの鬼門は大障害ではない。
最大の鬼門は最後の直線の最終障害である。
メジロラフィキやシングンマイケルが非業の死を遂げた最終障害。
メジロラフィキの時は現地で見ていたが、もう二度とあの雰囲気を味わいたくない。
震災の影響で夏に延期され、炎天下の中、メジロラフィキの亡骸を呆然と見つめるしかなかったあの時間。
今でもあの時を思い出すと苦しくなる。
大障害で落馬するケースはここ数年でほとんどない。
しかし、大障害後に落馬するケースは結構多い。
アップトゥデイトもその1頭である。
落馬した時の悲鳴は胸を締め付ける。
その時に近い悲鳴のような声が4コーナーを通過するあたりで起きた。
落馬したのかと思ったが、ブラゾンダムールが先頭に躍り出たことへの驚きのようだった。
正攻法の戦いをしたかったのかもしれない。
そんなブラゾンダムールをオジュウチョウサンはしっかりと受け止めた。
最終障害をしっかりとクリアし、直線の追い比べ。
そう簡単に抜かされないぞ、俺たちにも意地があるんだとブラゾンダムールと西谷誠。
俺たちが絶対王者だ、タイトルは譲らんとオジュウチョウサンと石神深一。
往年のオジュウチョウサンなら突き放せたのかもしれないが、ハナさえ出ていれば勝ちは勝ち、もう十分な差だった。
中山グランドジャンプや中山大障害、コロナ禍で行けない時を除けば、ここ10年はほぼすべて見に行っている。
あんたもモノ好きねぐらいの雰囲気を感じながら、毎年楽しみにしている。
翌日の皐月賞も有馬記念も一切現地で見る気がないのに、障害G1だけは必ず見たいと思う。
冒頭のベストレースで1位にした2017年中山大障害から、段々と雰囲気は変わっていったように思う。
レコード勝ちを重ね、強い勝ち方で下し、重馬場の消耗戦でも動じない。
4年ぶりに参戦した中山大障害で復活してみせた。
オジュウチョウサンが作り出すドラマは、間違いなく競馬ファンの心を動かしている。
今日、オジュウチョウサンが勝つと周りで涙を拭う人が結構いた。
オグリキャップの引退レースの有馬記念のような、心からの祝福と感謝、喜びが爆発している方もいた。
オジュウチョウサンを「私の推し」と称し、推しが勝ったと涙する若い女の子。
これが1人だけならまだしも、複数見受けられたからそれも衝撃だった。
まぁ2017年の中山大障害の時は、後にも先にもあの時だけ涙が出てきたので、その気持ちはよくわかる。
事あるごとに拍手をする傾向は年々強まり、石神深一の障害1000回騎乗のアナウンスで拍手があがった時はさすがに戸惑った。
わからんでもないが、そこから拍手してたら本番持たないよ?と。
しかし、オジュウチョウサンが勝ち、周りの雰囲気を見ていると、障害1000回騎乗の拍手は決してオーバーリアクションではなかったと思う。
あんな割れんばかりの拍手になるとは思ってもいなかった。
オジュウチョウサンが多くのファンのハートを動かし、多くの人を泣かせる。
平地のレースで同じような出来事を探そうとすれば、オグリの有馬記念ぐらいしかない。
同じレースで6回優勝する、1回でも大変なのに6回。
前人未踏、空前絶後、唯一無二、色々な四字熟語が浮かぶ。
この馬を顕彰馬にしなければ、障害レースはさっさと廃止した方がいい。
オジュウチョウサンを超える馬は、もう現れない。
そして、オジュウチョウサンの偉業を語り継いでいかないといけない。
間違いなくオジュウチョウサンはヒーローだった。