消費者金融に借金し、借りたり返したりを繰り返し、返済しかできなくなり、最終的に完済するのにおよそ8年かかった。
新たに借りる時から5年を限度に返さなくてはいけないので、限度額まで借りて返済して余裕が出来たら借りることを繰り返すと、その都度5年のタイムリミットがリセットされる。
過払い金ブームが一時期あったが、いわゆるグレーゾーン金利の時代に借りたり返したりを繰り返していた人ほど過払い金が存在する可能性は高まる。
グレーゾーン金利が撤廃されてだいぶ経過するが、それでもなお過払い金に関するCMなどがあるのはそのためである。
一番借金返済で大変だったのは復職に失敗した時である。
ハローワークで見つけてきて良さそうだなと思ったところにまずはバイトで入った。
結論から言えば、精神的に不安定な人が行くべきではないところだった。
落語家に弟子入りし、前座修業をしている気分になるくらい、何かと小言を言われた。
洞察力がないだの、何手先が読めないだの、なかなかに致命的なことを言われている。
洞察力がある人間はこんなところで働かず、きっと高収入を得られている。
洞察力がないから低い時給のところで文句を言いながら働いているわけで。
人のよさそうな顔をした上司だが、頭が悪い人間を心底毛嫌いするような振る舞いも結構あった。
学歴的にそりゃ毛嫌いもしたくなるくらいの高学歴だから仕方ないかもしれないが。
仕事自体はそれなりに楽しかったが、いかんせん上司との相性が致命的に良くない。
乏しい洞察力を発揮して、最大限やれることはやったのだが、辞めることになった。
この時はまだ借りたり返したりができる時期で、なんとか月々の返済分を工面し、やり過ごしていた。
リストラに遭うも家族には言えず、スーツを着て家を出て公園にたたずむお父さんのような感じで当面過ごすことになる。
しかし、それも長くは続かない。
ついに返済しかできない状態に入り、いよいよ首が回らなくなる。
当然親には、辞めたことも、そもそも借金を抱えていることも言っていない。
そこで、ネットでできる仕事というやつを探し出し、実家のパソコンで日中に仕事をする。
このことも家族には伝えておらず、さも出勤しているようにふるまっていた。
もう生きるにはこの道しかなかった。
今もその道を歩んでいる。
できることは最大限やって、おかげさまでクレジットカードが新たに作れるまでになった。
真人間になったような気持ちになったのを覚えている。
隠し事をするストレスから解放されたのはここ1年のことで、およそ10年近く何かしらの隠し事をしていた。
この場合の隠し事は家族に対するものなので、当然犯罪的なことではない。
いつかバレるかもしれないという恐怖は、ある種洞察力を養うのによかったかもしれない。
常に最悪を考え、行動をするようになり、危機的な状況を見事に回避し続けられた。
結果的に仕事がある程度軌道に乗り、こういうことをしていてこれだけの稼ぎがあると伝えて納得してもらった。
親戚の人たちが集まる場に行っても、嘘をついていたので、うまく上書きできたのもよかった。
ちなみに、自分が復職に失敗したバイト先は、今は存在していないようだ。
どこかに移転したのかは知らないが、忽然と姿を消している。
もちろん、ざまぁみろとは全く思わないし、そんな立場でもない。
きっと洞察力を発揮し、何手か先を読んで撤退したのだろう。
自分の選択は正しかったと、苦しいながらも正当化をしてみたい。