違和感の解剖図:勝負事とエンタメの不都合な真実

競馬、ボート、Mリーグからテレビ批評まで。世間に漂う「建前」を剥ぎ取り、その裏に潜む違和感の正体をロジカルに解剖する。単なる感想を超えた、不都合な真実の記録。


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西山朋佳女流三冠が初の女性棋士を逃した件に思うこと


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西山朋佳女流三冠はプロ棋士に一定の勝率をマークしており、その時点でプロ棋士としての力量はある。

今回はプロ入りして間もない棋士5人を相手にした編入試験で、2勝3敗で不合格となってしまった。

女流棋士の挑戦は2人目だが、いずれも不合格に終わっている。

2022年に当時の里見香奈女流四冠が挑んでいるが、2人とも女流棋士の中では両巨頭、この2人が女流タイトルを分け合っていると言える。

2人とも奨励会で三段まで行っており、「正規ルート」でもあと一歩までというところにいた。

本来プロ棋士になるには、奨励会の三段リーグで2位以内になる必要がある。

もしくは3位で次点となり、次点2回もしくは次点1回かつ新人王戦などでの優勝が条件。

一方で、プロ編入試験というルートもあり、こちらは何例か既に存在する。

西山朋佳女流三冠は三段時代に次点まで、しかも、普段なら2位以内の成績でもおかしくない、優秀な勝ち星を残した。

いわばあと1勝で棋士になるチャンスを2回逃したとも言える。

これは勝負弱いとかではなく、あと一歩まで追い込んだと捉えるべきだろう。

例えば、2勝0敗から3連敗で不合格だったのなら勝負弱いと言われても仕方ないが、女流棋戦のタイトルマッチと同時並行で、しかも直前に体調を崩し、延期が難しい中、病み上がりの時期に挑まざるを得ず、負けた対局もあった。

それを経てフルセットに持ち込んだのだから、執念は人一倍あったと言える。

だから、西山朋佳女流三冠であれば、もう1回チャンスをつかめば、三度目の正直で夢にたどり着くと思っている。

 

棋士編入試験で試験官として対峙する四段の若手男性棋士は大変な重責である。

現在のルールが整備され、最初の挑戦者となった今泉健司五段は、2014年に挑み、3勝1敗で合格した。

この時、強く覚えているのは第4局の試験官で、今泉健司五段に負けて、合格の判を押すことになった石井健太郎七段である。

現在のルールで初となるプロ編入試験の合格者誕生、当時はニコ生での将棋対局に注目が集まりやすかった時期。

マスコミが対局場に集まる中、敗れた石井健太郎七段が負けたショックもあり、しばらく動けなかった姿が大変印象に残っている。

そんな石井健太郎七段だが、実は当時編入試験の試験官だった5人の棋士の中で、順位戦でのクラスが最も高い。

2024年度はB級1組、その1つ上はA級、名人戦への挑戦が可能な一握りの中に入ってもおかしくないところに来た。

2024年度は既に昇級者が確定したが、魔境とされるB級1組において、羽生善治九段に勝利するなど、勝ち越しを決めている。

当時どれほど悔しかったか、想像に難くないが、結果としてトップ棋士の階段を一歩ずつ上っている。

 

西山朋佳女流三冠が三段リーグで次点となった時、最後まで1枠を争ったのが服部慎一郎六段。

西山朋佳女流三冠と同じ勝敗だったが、三段リーグは前期の成績によってつけられる順位が重要で、その順位差で四段となった。

そんな服部慎一郎六段は快進撃を続け、新人王戦では2度も優勝したほか、2024年度は藤井聡太七冠が記録した最高勝率を上回る勢いを見せる。

これならば納得という成績を残していると、納得もいきやすい。

 

今回西山朋佳女流三冠に不合格の判を押す形となったのが、柵木幹太四段。

柵木幹太四段は名古屋大学を卒業するなど、高学歴棋士の1人。

昔は高学歴であることが珍しく、中卒・高卒で将棋専念の人が多く、藤井聡太七冠もその1人。

ちなみに藤井聡太七冠も将棋に打ち込むために高校を中退したが、その高校は名古屋大学教育学部附属高等学校なので、展開次第では高学歴棋士に間違いなくなっていた人だろう。

柵木幹太四段に話を戻すと、次点2回で四段になったため、フリークラスからのスタート。

編入試験を突破しても、実はフリークラスに編入され、10年間で一定の成績を出さないと引退である。

柵木幹太四段もその1人で、勝率は5割を超えているが、これでは突破はできない。

突破パターンで多いのは、「良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上」である。

これが最も多く、最も現実的なケースだろう。

現状ではフリークラススタートで始まった棋士全員が脱出に成功している。

プロになる壁は高いが、元々プロ編入試験を受ける基準が、フリークラス脱出レベルなので、編入試験組はもちろん、次点2回組も強い。

そもそも三段リーグに入った時点で、プロ棋士と大差はないとされる。

「フリークラスとはいえ、プロはプロ、めっちゃ遊ぶぞ!」なんて大学1年の4月みたいなノリの人はいないだろう。

柵木幹太四段もいずれはフリークラスを脱出する。

そして、今回の経験を踏まえて飛躍を願いたいと心から思う。

屈辱から得るものもあれば、誰しもが誕生や勝利を願った相手を倒してしまうことで請け負う重圧が、成長を促すこともある。

西山朋佳女流三冠が再度挑戦し、もしも女性初の棋士となった時、同じフリークラスでは立場がない。

名古屋大学に入れるだけの頭の良さ、コツコツと取り組む姿勢がある。

今回の経験は柵木幹太四段にとって大きな糧となることを願う。

そして、女性初の棋士がそう遠くない未来に誕生することも強く願う。


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