違和感の解剖図:勝負事とエンタメの不都合な真実

競馬、ボート、Mリーグからテレビ批評まで。世間に漂う「建前」を剥ぎ取り、その裏に潜む違和感の正体をロジカルに解剖する。単なる感想を超えた、不都合な真実の記録。


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あいテレビ「鶴ツル」でのセクハラの件をBPOの報告書を見ながら振り返る


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www.bpo.gr.jp

愛媛県にある「あいテレビ」の番組において、フリーアナウンサーの女性が、男性タレントなどからセクハラを受けたというニュース。

この話は何年か前から出ており、2023年にはBPOで審理が行われた。

委員会では「人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えない」と判断している。

経緯としては、2021年11月時点でフリーアナウンサーがあいテレビのプロデューサーに対し、男性出演者の性的言動に悩まされていて、それを理由に降板したいと申し出たことがきっかけとなっている。

「鶴ツル」という番組は2016年からスタートし、申し出た時点で5年以上続いていた。

BPOでは「コメディアン・俳優である男性タレント」と実名が出ていないため、ここでは男性タレントとする。

https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/brc/determination/2023/79/dec/k_079_itv_v2.pdf

いつから性的言動に悩まされてきたのか、報告書を読み進めると、番組開始から間もないころから、下ネタばかりだったことをプロデューサーにぼやくフリーアナウンサーの姿がある。

ただし、これはフリーアナウンサー側の主張であり、プロデューサーはその時点では気が付かなかった様子。

ちなみに、フリーアナウンサーが降板を申し出た時点で、プロデューサーはとても驚き、翌年3月で番組を終わらせる判断になっていった。

一方で、テレビ局側は、フリーアナウンサーが番組を「好意的に評価していたように」見えたと主張する。

フリーアナウンサーが発信したブログやスタッフへのメールなどからも、確かにそのような推察もできる。

今回テレビ局側が色々と予見できたのではないかということで、フリーアナウンサーがあいテレビを訴える形となった。

BPOの判断ではその予見はできなかったという結論が出されている。

 

BPOの判断として「人権侵害が成立するのは、余程ひどい表現の場合に限定するのが妥当」としている。

また、「『被害者』の意にかかわりなく表現だけを取り上げて問題ありとすることには、委員会としては謙抑的であるのが妥当」とも書かれている。

BPO側で色々とあれはダメ、これはダメとやり過ぎると表現の自由の問題にもなるため、その点はとても頷けるところ。

発言の中身は下ネタが過ぎた部分もありつつ、フリーアナウンサーが一連の下ネタを冗談として受け止めていると捉えた視聴者も多いのではないかという意見があり、人権侵害とは言えないという判断になったと報告書に書かれている。

 

フリーアナウンサーがプロデューサーに降板を申し出た翌週に収録があるというので、下ネタはできる限り避けていくことや仮に下ネタが飛び出しても放送はしない、出演者にも徹底していくことなどが話し合われた。

しかし、フリーアナウンサーの髪型をからかう発言や下ネタを控えるよう言われた旨の言動がなされ、フリーアナウンサーが、話し合いで決まったことと違うと主張する。

フリーアナウンサー自身が降板の真の理由を出演者などに伝えないようにプロデューサーに伝えていたことから、なぜ下ネタを控えるべきか、出演者に真の理由を伝えられず、出演者も深刻には受け止めなかったと言える。

色々総合して、委員会の中での多数が人権侵害はなかったとしたが、一部で異を唱える意見もある。

その意見に目を通すと、これはこれで間違っているとは言えない。

個人的には、少なくともどちらが一方的に勝つような結果にはならないようにも感じる。

その時は事を荒立てないようにフリーアナウンサーの女性が取り繕い続けただけで、内心は不快で不快でしょうがなかったと言われれば、確かになぁと思う。

 

読み進めていくと、鶴ツルでどのようなやり取りがあったのか、テキストで紹介されている。

ぜひとも読んでいただきたいと思うが、まぁあの人なら言いそうだなぁという感じがする。

住職の話がウケた時、とてもノリノリになっていく様子などもまとめられている。

テキストを読む感じでは、しょうもない下ネタが並んでいて、表現こそ難しいが、酒の場でそういう話する人いるなぁという感じである。

 

食い違う部分を見る限り、テレビ局側は本当に寝耳に水だったんだろうと感じられる。

少なくとも女性側とテレビ局側で、コミュニケーションがうまくいっていなかったことはわかる。

うまくいってなかったというよりも、結構不足していた印象を受ける。

もう少しコミュニケーションを重ねていれば、ある程度防げたり、ソフトランディングができたりしたように感じられる。

ローカル局が知名度の高いベテラン芸能人の対応に慎重になり過ぎているとされる様子も、報告書で見られたが、それがあったとしても驚きはない。

1回の収録で8本撮り、収録15分+休憩5分、睡眠時間が人と相当異なる方を相手にすると、これは致し方ないか。

 

既に双方の言い分は出そろっているので、裁判所が改めて審理をするとなっても、どこまで新事実が出るかはわからない。

女性側の病状を含め、どこまで配慮されるのかも裁判の中で決まっていくことだろう。

タレントに対する風当たりがどうなるかも、現状では判断しにくい。

下ネタが絶対にダメなのではなく、結局のところは信頼関係。

ちょっとした不満がジャックポット的に出てきてしまうのは、よくあることだ。

それを防ぐにはコミュニケーションを取り続け、小出しに放出してもらうほかない。

どこまで予見できたかの判断は難しいと思う。

では、コミュニケーションを密にしていたら予見できたのかどうか。

今回の件に限らず、どんなトラブルも、コミュニケーションと信頼関係の問題でこじれる。


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