女子選手はとにかくインに弱いイメージがある。
これが若手の女子レーサーや落ち目のベテランならわかる。
ところが、女子レーサー界のトップですら簡単にインを飛ばす。
それが不思議で仕方なかった。
遠藤エミも、大変申し訳ないが、肝心な時にインで飛ぶ選手の1人の認識でしかない。
もちろん、SGで十分やれているわけだから、強い選手なのは間違いない。
だけど、大きなレースでインを飛ばしていく。
2020年のレディースチャンピオン、準優1号艇ながら飛んでいった。
ドリーム戦では会心の当たりを提供してもらい、いい思いをした記憶も残っているのだが、なぜかインだと弱くなる。
本人もそのあたりを気にしているようだ。
そんな認識をボートレースクラシックまで抱いていた。
まさかのシリーズリーダーだったが、遠藤エミはまず運が良かった。
一線級のレーサーたちがとにかくフライングを切りまくった。
グランドチャンピオン選出除外者続出で、唐津の施行者が頭を抱える勢いでフライング祭りに。
そして準優、6号艇に前本泰和が入り、前付けの懸念があった中、他の選手が抵抗、オールスローで本番を迎えたこと。
もし抵抗をかいくぐり、インまで狙おうとしてきたら厄介だっただろう。
2001年の唐津、寺田千恵が優勝戦1号艇でSGのタイトルに近づいた時。
今みたいなルール整備は行われておらず、とにかく前付け。
その煽りを受けてインが深くなって敗れてしまう。
それと同じことを危惧したが、杞憂に終わる。
そして、優勝戦2号艇に秦英悟が入ったこと。
確かに2コースの秦英悟は怖いが、SGの大舞台、彼は記念での優勝経験がない。
色々な条件が遠藤エミに味方した。
あとは本人が恐怖と戦い、克服するだけ。
遠藤エミは恐怖に勝ち、危なげなく3周を回った。
桐生祥秀が日本人初の9秒台をマークし、その後何人もの日本人が9秒台をたたき出す。
それまでなかなか届かなかった9秒台、1人がその壁を破ったら続々と記録が出始める。
ガラスの天井は破るまでは確かに手ごわい、しかし、破ってしまえばこっちのものだ。
平高奈菜もいれば大山千広もいる、平山智加もいれば守屋美穂もいる。
SGで十分にやれそうな女子選手はわんさかいる。
遠藤エミが最初に偉業を達成した要因は、運の良さが大きかったと思う。
まぁモーターの引きも運の良さに入ってしまうわけだから。
あとは、これまで痛い目を見てきた負の経験が最後の最後でプラスに働いたのではないだろうか。
だとすれば、先ほど挙げた選手たちも条件さえ整えばSGを獲れる。
決して皮肉ではなく、心の底から思っている。
ボートレースオールスターで高田ひかるがSGの舞台に足を踏み入れる。
今回の菅章哉を見る限り、高田ひかるはSGの洗礼を浴びるだろう。
1つに特化するだけでは勝てない。
でも、そのことがわかるだけでも十分な収穫である。
遠藤エミの次節は三国のヴィーナスシリーズ。
多くの人は期待するだろうが、意外と苦戦しそうな気がする。
それは調子に乗って、浮かれて苦戦するようなバカなことではない。
与えられたモーターに比例した結果に収まるようなイメージがあるからだ。
ボートレースはモーターの引き勝負である。
女子のトップ選手の中で腕の差はそんなにないと思う。
そしてここからが遠藤エミにとっての本当の戦いだろう。
グランプリまでの1年、きっと遠藤エミにとって収穫しかない期間である。
女子相手に敗れても、大舞台でフライングを切っても、収穫でしかない。
そして、歴史の目撃者になれたことに対して、最大限の敬意を表したい。