ここ最近のJRA、もとより公営ギャンブル全体に言えるが、売り上げが上がっている。
地方競馬だと高知競馬場が劇的に売り上げを伸ばしている。
一時期1年間で40億円程度しか稼げなかった高知競馬場が、年間で1000億円に届くかどうかというところまでやってきた。
その要因は明確で、ネット投票が充実したことが非常に大きい。
コロナ禍でネット投票に切り替えざるを得ず、ある程度年齢を重ねた人でもPATなどを使いこなす。
競馬場の入場人員は1996年に1411万6684人がピークとなり、そこから年々減っていき、2019年には623万6197人まで減り、半減以下となった。
売得金額は4兆円をピークに下がり、2011年に約2兆3000億円となり、そこからジワジワと回復させ、コロナ禍特有の波に乗り、昨年度3兆2500億円まで回復した。(参照:JRA)
今の売り上げはテイエムオペラオー全盛期の頃の競馬の売り上げとほぼ同じである。
2010年は売り上げがどこまで下がっていくのか、不透明だった時期である。
売上が下がることでレースの賞金や人件費のカットにつながることは、多くの地方競馬場で見られたことだ。
それはJRAでも同じだった。
2010年の年末に多くの騎手が大量に引退し、調教助手に転じたことがあった。
これは調教助手への転身のハードルが高くなるほか、賃金体系の変更が影響した。
2011年から入った人はそれ以前の人と比べ20%カットされてしまう。
つまり、2010年に辞めておかないと、その後に転身しても給料が2割少ない。
仮に30万円もらえるとすれば、24万円しかもらえないことになる。
年間にすればかなりの差になるので、多くの騎手が引退して転身したのは当然と言える。
これは厩務員も同じで、2010年以前に入った人とそれ以降に入った人で大きな格差がある。
つまり、ベテランは多くもらい、若手はそこまで多くもらえない。
もしもこんな会社があったら、若い人は来るだろうか。
何よりこの問題はここ1年、2年の問題ではなく、何年も前から問題視されていた。
2016年の記事だが、この時から調教助手などは疑問を持っていた。
ただ、2016年は売り上げがまだ回復途上であり、盤石と言えなかった。
ウマ娘ブームで競馬への認識がよりソフトになる前のことなので、慎重になるのは無理もない。
状況は明らかに変わり、2000年初頭にまで売り上げは回復している。
なのに給与体系はそのまま、これでは厩務員も調教助手もたまったものではない。
ただでさえ人手不足で、人員補充も大変だと言うのに。
今回厩務員の労組がストライキ覚悟で日本調教師会と労使交渉に挑むのは当然といえば当然である。
個人的に驚いたのは世間が厩務員のストライキをおおむね容認していることだ。
諸外国ではストはよくあることだが、日本人はストライキを「サボり」と捉える。
権利の主張すら煙たがられる日本において、厩務員のストライキを容認するのは意外に思えた。
ちなみに自分は、気に入らないことがあれば、どんな職種でもストライキが起きればいいと思っている。
だから余計に、受け入れられていることに驚いた。
厩務員がどれだけ大変か、世間はしっかりと認識していると感じた。
もちろん厩務員の大変さを知らない人も多いが、生き物を扱う仕事なので、想像すれば何となく理解はできる。
これを書いているのは3月17日午前0時なので、実際にどうなるかまだわからない。
もしもストライキが決定すれば、24年ぶりにストを理由に中央競馬は中止に追い込まれる。
フラワーカップやファルコンステークス、スプリングステークス、阪神大賞典も行えず、翌週に回される可能性がある。
土曜だけ中止、日曜のみ開催という判断ができるのであれば、それがいいかもしれないが、フラワーカップから桜花賞を目指す陣営も多少はいるはず。
もし土日すべて中止で、前回と同じパターンで翌週にすべて持ち越すなら、超豪華な2日間になる。
JRAプレミアムウイークで全賭式80%にでもした方がいい。
これにドバイミーティングがあるわけで、正直、中止でもいいかなと思っている。
未勝利馬やそのオーナーからすれば死活問題だが、厩務員のストライキは仕方ない。
一方で厩務員の労組の要求通りにした場合、その給料分はオーナーたちに求めることになる。
馬主たちにも言いたいことはあるだろうし、騒ぐ人は騒ぐだろう。
しかし、初任給を大幅に上げる動きが色々な業界で見られる中でそれを無視するメリットはない。
安い人材を求め、外国人を多く採用して厩務員にしてしまおうと思っていたら別だが、我々日本人が諸外国に出稼ぎに行く時代になってきた。
オーストラリアなどで働く日本人の年収の高さを見ると、日本人が海外へ出稼ぎをする時代が来たかと思わせる。
もしも、海外で厩務員になった方が稼げるということになれば、より人材不足は加速する。
双方が納得するのは無理だとしても、前向きになれる妥協点は必ずある。
そこを目指して何とか労使交渉を実りあるものにしてほしいと心から願う。
厩務員のストライキ問題がどうなるか、前日になってようやく騒ぎが大きくなったが、あまりにも遅すぎた。
調教師サイドはもっとやれることがあったのではないだろうか。