日本テレビが視聴率三冠王と呼ばれ、長らくトップを走り続けていた2003年。
この年、あるプロデューサーが視聴率を調査する機械がある家を特定し、報酬を支払って視聴率を買収するという事件があった。
結果としてフジテレビの勢いも相まって日本テレビは視聴率三冠王を明け渡すことになる。
当時もそれなりに騒いでいたが、今ならば余計に騒ぎになったのではないだろうか。
上記は「視聴率操作」に関する調査報告書というタイトルで、事の真相が書かれている。
2003年10月27日から11月17日までの調査期間、まさにちょうど20年前である。
今もそうかもしれないが、当時の日テレは視聴率至上主義がかなり強かった。
買収事件を引き起こしたプロデューサーはそのプレッシャーもあったのかもしれないが、視聴率という悪魔に取りつかれてしまったように見える。
一にも二にも視聴率、視聴率にこだわりを見せた一方、実際には突出した数字は残せていない。
結果的にレギュラー番組を担当しない時期が続き、特別番組を担当する際には絶対に結果を出すぞというような気負いになっていく。
それで興信所を使って視聴率の機械が置いてある家を割り出そうとし、結果的に見つかった。
割り出した時点で200万円近い費用を払い、さすがにこれでは金がかかりすぎるからと、制作会社に水増しした請求書を作ってもらい、その一部をキックバックし原資とした。
ちなみに依頼を受けたお宅では1番組で商品券1万円がもらえたようだ。
別につけっぱなしでいいわけだから、それで1万円なら割のいいバイトである。
しかしながら、実際に買収するには相当な苦労とカネがかかっていることが報告書から見て取れる。
ようやく買収に成功したと思ったら、あっさりとビデオリサーチにバレてしまう。
それでもなお自ら電話をかけて依頼を行うなどして買収は続けたが、のちに分かったのはたった3世帯、0.5%程度しか動かしようがなかったということ。
しかもビデオリサーチは実際にどれだけ視聴率が動いたかの回答を拒否している。
この時代にビデオリサーチがその態度をとればビデオリサーチもかなり叩かれたかもしれない。
水増し請求でプロデューサーが日テレに与えた損害はおよそ1000万円ほど。
和解金額も1000万円なので、損害分を返してこの話を終わらせたことになる。
視聴率買収で罪を問うことはできないので、結果的にこの問題はうやむやとなった。
このプロデューサーが幸運だったのは、現在プロデューサーの実名で調べると全く別の同姓同名の人物がアニメのプロデューサーとして活躍している点だ。
見事な逆SEOである。
20年が経過しながら、誰からも語られることなく、日テレの黒歴史としてあり続ける。
Tverなどもあるので、もはや視聴率工作に意味はなくなったと言える。
確かに視聴率というのは面白く、統計の誤差はそれなりにある。
誤差の範囲だけで1%以上あったように思う。
0.5%の影響力があったとしても、本来の誤差の範囲を加味すれば2%の上振れも見込めたかもしれない。
悲しいかな、このプロデューサーが大した番組を作れていなかったのが大きい。
番組名を見ると若干の懐かしさすら覚えるが、そんなに当時の番組は覚えてない。
そりゃ小学生だからそうなのだが。
当時視聴率しか指標がなかったわけで、暴発するテレビマンがいても不思議ではない。
数々のヤラセも根底には視聴率の影響があったのかもしれない。
また過度な演出も視聴率しか指標がなかった時代の産物である。
もはやそんな時代は終わり、Tverで見れる時代になった。
TverはCMが非常にうざったく、不愉快なまでに時間がかかる。
おそらく昔からの演出とTverはかなり合わないのではないだろうか。
うっとうしいと思われてナンボだろう。
コア層を大切にするのであれば、もう変えた方がいいように思う。
テレビを作る側は視聴者を全力でバカにしているのだろう。
でも、視聴者はテレビを作る側をよりバカにしている。
いわばお互いに見下しあっている状況にあるわけで、昔からそういうものだろうかとすら思う。
色んな指標があるのなら、作り手が重視する指標において結果を出せる作り方をするべきだろう。
それがTverなのか映画なのかネトフリなのか視聴率なのかは人それぞれだ。
もしも視聴率買収を行ったプロデューサーが今番組を担当したら何に力を入れるだろうか。
結局視聴者へのリスペクトを欠いている人間は何をやってもうまくいかないとは思うが。