女子レーサーの中で一番応援し、活躍を楽しみにしているのが長嶋万記である。
自分はここ数年でボートレースを好きになったのだが、そのきっかけが長嶋万記だった。
蒲郡のレースで6号艇に乗っていて、目の覚めるようなまくり差しを決めていた。
この人はかっこいいなと思って、応援し始めた。
長嶋万記の成績は自分が応援し始めた時期は低迷気味で、前年までの余勢でオールスターなども出ていたが、事あるごとに転覆し、リズムを崩していた。
自分が知る前の長嶋万記と応援し始めてからの長嶋万記では強さの度合いが違っている。
あれだけ優勝していたのに、1年に1回ぐらいしか優勝しなくなった。
レディースチャンピオンでは得点率で同率18位ながら、深川麻奈美とタイム差の勝負となり、予選敗退したこともあった。
2021年、ついに優勝0回で終わってしまい、A2を経験したり、ギリギリでA1を確保することもあった。
2017年や2018年に知っておけば楽しかっただろうなと今でも思う。
しかし、2019年から2021年までの低迷は決して衰えが原因ではない。
長嶋万記のブログや過去のマクールの連載、インスタなど色々と触れていくと、相当試行錯誤を重ね、変化を模索していることがわかる。
フィジカル面だけでなく、メンタル面を強化しようという意欲がかなり伝わる。
弟子の森下愛梨を引き連れ、複数の女子レーサーと合宿をして、レース映像を見る。
研究を行い、どこをどのようにしていくべきかを話し合うというのは、どのレーサーもやっているのかもしれないが、大切なことだ。
海野康志郎も自身のYouTubeチャンネルで解説しているが、選手の考え方などがわかり、参考になる。
長嶋万記はいかに自然体でポテンシャルを発揮するかに苦慮し続けてきた。
スピリチュアル的で危うい部分も否めないが、すべてはより結果を出すためである。
そもそも長嶋万記は最初から順風満帆だったわけではない。
91期自体がデビュー期での勝ち上がり、初優出など目立った成績を残している。
やまとでのリーグ勝率はまずまずなのに優出の数が見合っていない。
リーグ勝率4点台だった三浦永理に、デビュー初勝利に要した出走回数で負けている。
B2こそ最初の1年で脱出したが、B1を6年経験し、ようやくA級に上がったのは2010年。
2010年といえば同期の山口剛がSG制覇を果たした年である。
その年にようやく長嶋万記は初優勝を果たした。
弟子の森下愛梨のこれまでの成績と比較すると、成長曲線の鋭さが若干異なる程度で実は似ている。
森下愛梨が2024年あたりに初優勝して、産休を経て、2030年手前で女子戦で無双を果たすというイメージはつきにくい。
長嶋万記のボート人生は、若手の時に苦戦をした選手にとって希望になるはずだ。
長嶋万記はこれだけ実績がありながらも、タイトルに縁がない。
レディースチャンピオンに至っては1度も優出がないから不思議である。
先日のクイーンズクライマックス3着で流れはかなり変わったように思うが、イン戦で抜きで2着になってしまうところ、ピークはまだ先に見える。
長嶋万記が念願のタイトルに手が届く可能性は十分に考えられる。
女子戦は若手が大挙して躍進してベテランを蹴散らすような雰囲気がさほどない。
清水愛海や川井萌が片鱗を見せ始めているが、若気の至りのようなレースもまだまだある。
1回の若気の至りですべての流れが壊れるのがボートレースの1節。
魅力あふれるレースと無謀な賭けに出て負けたレースが同居するのが若手の専売特許のようなところがある。
昨年のレディースチャンピオンで優勝戦1号艇の實森美祐が前付けで深くなり、フライングに散った。
女子戦で何が何でも前付けするという光景になかなか出くわさない。
それこそ鵜飼菜穂子が引退までイン屋のごとく前付けをしていたが、あの方以降ほぼいない。
原田佑実がピット離れで後手を踏みやすいので、急いで枠を取りに行くようなことはあるが。
その点、ベテランは場数もあるし、鵜飼菜穂子などに洗礼を浴びたから、前付けにも屈しない。
實森美祐のフライングの遠因となった前付けは平山智加が行ったが、SG戦線など記念レースなどでこの手の前付けは散々やられてきたはずである。
長嶋万記も場数を考えれば、経験値で若手を屈服させることは可能だ。
ヤングダービーに出られる年代で、今の40歳前後の女子選手を一掃できるような女子選手は乏しい。
大山千広や高田ひかるはケガなどもあるが、安定感があるわけではない。
長嶋万記が克服すべきは、気合が空回りしやすい点。
気負いがすごく、それがハマればいいのだが、ハマらない時は悲惨である。
最近になってそれがようやく落ち着いてきたように思う。
まずはレディースオールスターでタイトルをつかんでほしい。
選手紹介で笑いを取るという点ではもはや一生分の仕事は果たしている。
その仕事は後輩に譲ってもいいように思う。
いや、その前の東海地区戦、地元でタイトルを獲る方を期待すべきかもしれない。