私人逮捕にもルールがあり、現行犯やそれに準ずる犯罪が行われた時に私人逮捕ができる。
だから、指名手配犯がいても、現行犯でない限りは「お前!指名手配犯だな!御用だ御用だ!」と身柄を拘束できない。
また歩行者が歩道用の信号を赤信号なのに渡ることがよくあるが、「現行犯だ!私人逮捕するぞ!」と身柄を拘束しようとしても、罰金刑が軽微なため、逮捕できない。
罰金刑30万円が1つのボーダーラインとなる。
最近は痴漢や盗撮の現場を押さえて私人逮捕を行うYouTuberがいる。
その方の話を聞く限りでは、経験からの確信によって私人逮捕をしているのかもしれない。
同じ区間を行ったり来たりし、キョロキョロと周囲を見ていて、女性の後姿を追いかけるなどをしていると怪しいらしい。
そこには一般人はこんなことはしないという常識がある。
同じ区間を行ったり来たりする理由がないとか、キョロキョロと見てるのは不審だとか、ムラムラしてるから後姿を追いかけているんだとか。
ただ、世の中には変な人も多く、同じ区間を行ったり来たりする人はそれなりにいるように思う。
電車が好きで特定の区間の風景だけが好き、休みの日はずっと見ていたいという人もいるかもしれない。
女性の後姿をついつい目で追いかけるのも男の悲しい性というやつだろう。
これら1つ1つは犯罪でもないし、何をしようと自由だ!と言われれば何にも言えない。
とはいえ、これらの行為が前兆であり、あいつはやりかねんぞというサインとして目星をつけるのはわからんではない。
私人逮捕が当たり前になる世の中は、個人的には怖いと思う。
例えば飲酒運転をしていたら、その時点で動かぬ証拠があるので、「これ以上運転するな!」と私人逮捕をしてものちにひっくり返ることがない。
盗撮も大丈夫だろうが、痴漢はわからない。
丸山ゴンザレスの裏社会ジャニーで私人逮捕を語っていた方も、手の甲で1回女性の尻などを押し付けるような行為だけでは動けないようだ。
たまたま触れただけだと言われたらそれまでである。
その方は相当な確証をもって警察に突き出しているようだが、本当にたまたま触れてしまったケースもいずれ出てくるのではないかと感じる。
ちなみに警察に突き出してもその多くは厳重注意で終わるという、それはそれでどうなのかと思わざるを得ない現実もあるのだが。
しかしながら、万が一冤罪で、色んな不利益を被って結果的に人生に絶望して死を選んでしまった場合、責任が取れるのかと自分なんかは不思議に思う。
それが怖くて私人逮捕のYouTuberが務まるか!という話かもしれないが、可能性はゼロではなく、ゼロでないことは近々起こる。
痴漢や盗撮、その抑止力になる活動は素晴らしいのだが、慎重さが欲しいところである。
人間は神様ではないのだから、間違いはある。
私人逮捕系での間違いは1回でも許されにくいように自分は思う。
誰しもが私人逮捕をし始めたら、不必要な犯罪が生じてしまう可能性は極めて高い。
逮捕される側、する側が激しく抵抗し、傷害罪や暴行罪、殺人、殺人未遂など色々なことが生じかねない。
警察でも過剰に取り押さえて、容疑者が亡くなることもチラホラとある。
警察でもそうなのだから、一般人が私人逮捕をすれば下手をすれば犯罪者になる可能性もあるし、自分が返り討ちに遭って亡くなるかもしれない。
警察が近くにいない、逃走の恐れがある時などは私人逮捕をすべきだろう。
1人でも多くその場にいてもらわないと、マンツーマンでは色んな事態を招く可能性がある。
間違いなく正義感は暴走する。
正しいことをしたまでだという考えだけでは、間違ったジャッジを下す。
あと、権力に対する恐れを1人1人が持たないといけない。
間違った形で権力を行使すれば、多くの人を不幸にさせる。
バカが権力を持つとロクなことにならないのは、学校の先生などを見れば明らか。
権力行使に慎重で、確証がない限りは動かないぐらいがちょうどいいと自分は思う。
痴漢や盗撮に関して私人逮捕をする人はそれなりに確証があって動いているし、バカだとは全く思わない。
ただ1回のミスですべてを否定されたり、危害を加えられたりする可能性は十分に考えるべきだ。
その覚悟があるかないか、結局はそこだろう。
みんなヒーローになりたいのかもしれないが、ヒーローであり続けるのは大変だ。
お腹が空いている子がいたら自分の顔をちぎってプレゼントする、あなたにはできるだろうか。
困っている子供がいたら秘密道具を上げ続け面倒を見る、自分にはできない。
正義感だけで動き続けるのは維持する労力がハンパない。
そして、人間なんぞ所詮はデタラメな生き物である。
だからといって犯罪はもちろんダメなのだが、他人を正しくジャッジし続けられる人はいるのだろうか。
いつか私人逮捕関連で何かしらの事件が起きるだろう。
その時にどんな世論の動きになるかは、私人逮捕を行い続ける方たちの振る舞い次第と言える。