何でもかんでも若者のせいにしたがるのは指導者の怠慢であり、単なる勉強不足であると自分は感じる。
軍隊ならいざ知らず、人材を「人財」と称する時代において、自分の指導力不足を棚に上げて他人のせいにする時点で、そんな人間は指導者になるべきではない。
ここまで書くと中日の立浪監督のことを称しているようだが、叱り飛ばす人が全員悪なはずもない。
厳しく指摘され叱られても、人望が厚い人は厚い。
何でもかんでも温厚で怒らないから人望の厚さにつながるかといえばそうでもない。
どれだけ物騒な言葉を使っても、単に口が悪いだけで心根は優しい人もわんさかいる。
一方で慇懃無礼なまでに丁寧な言葉遣いをしていても、時折見せる口の悪さが笑えない人もいる。
若者の根性の無さを憂う人間に、人望を求めるのは無理な話だと最近は思うようになった。
たまたまこの日のオモウマい店を見ており、登場したのがシェ・シバタの柴田武。
サックスを最近始め、誕生日を迎えたお客さんにサックスでお祝いをしていた様子が印象的だった。
自分は後半から見ることになったが、どうやら前半の方で「パワハラ暴言」があったらしい。
しかし、パティシエというか料理人の世界において、パワハラや暴言、下手すれば体罰がない方が不思議に思う。
柴田武もブログで語っているように、パティシエや料理人の世界は職人の世界であり、そこの部分を随分重んじているようだ。
そうなると、パワハラ暴言のようなものが出てきても何ら不思議ではないし、よくある光景と言ってもいいだろう。
厳しく指導する光景を見て愉快になる人は限られる。
たいていは厳しく指導する光景を見て不快になるのが普通である。
しかし、シェ・シバタはこの手の情報に疎い自分でも聞いたことがあるくらい、有名な店である。
弟子たちがついてくるのは、柴田武の腕もさることながら、配慮、フォローがなんだかんだで行き届いているのだろう。
2019年に柴田武がインタビューを受けている。
まだまだダイヤルアップ接続が普通だった1998年からパソコンを買ってホームページを立ち上げるなど、相当最先端を行っていることがわかる。
これが東京ならわかるが、岐阜県の多治見でやってたというからすごい。
このあたりのマインドは「他人と同じことはやりたくない」という姿勢によるものだろう。
そして、パティシエや料理人などブラックになりやすい業界において、働き方改革をすぐさま行ったことも紹介されている。
法律の枠組みを意識し、その中でやれることをやる、この意識があるだけで、単なる「パワハラ暴言おじさん」とは違う。
インタビューを読む限りはとても冷静で、2023年に読んでも全く古臭く感じない内容だった。
わずか数年で古臭く感じることなんてあるかと思われるかもしれないが、たった数年、いや、1年、半年程度で内容が陳腐に思えるものは結構ある。
ここまで読めば、柴田武は決してその場の思い付きで動いている人ではないというのがわかる。
しかしながら、自分が見ているのは表向きのところで、従業員などが心を病むくらいにパワハラを受けていると主張しても、全く驚かない。
同床異夢ではないが、同じ景色を見ているはずが、実際は全く異なることはこの業界に限ったことではないからだ。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/industry/service/interview/pdf/051105.pdf
2011年にジェトロのインタビューを受けた柴田武。
シェ・シバタは多治見や名古屋に出店し、あとは海外というなかなかに攻めた戦略を立てている。
東京に出店しないことで正当な評価を得られなかったことが屈辱だったと語るなど、こちらでもストレートに語っている。
今でこそ日本もデリバリー文化が浸透したが、2011年の中国は既にデリバリー文化だったそうだ。
こういうことも海外に行かなければわからない。
そして、あえて中国などアジアに行くのも、他人と同じことをしたがらない柴田武らしい。
柴田武には人望があると仮定して書くが、やはり明確な成長と実績を示しているからだろう。
オモウマい店ではバンコク編が近日公開となるが、バンコクへ行くのも2011年の段階で中国進出を果たしている時点で決してめちゃくちゃな行動とは言えない。
確かなブランディング、実績をしっかりと見せていれば、「この人についていけば自分も成長できる!」と従業員も思えるし、多少のパワハラも「愛のムチ」と変換できる。
あとは柴田武の言葉にウソがなく、本音をストレートに語っていることも要因だろう。
ジョブチューンにも出ており、その時に使った合格不合格の札がいくつも置かれている様子など、律儀な人なんだろうなと思わせる。
そのジョブチューンでは、安ければいいという流れは良くないなどと発言するなど、安い値段でいいものを出そうとする流れへの危機感を出している。
ここまで深堀りしていけば、また印象も変わるだろう。
変わり者だとは思うが、いわゆる無鉄砲な変わり者ではない。
ブランディングを意識し、ウケることをやりながら、品質に関しては全くの妥協を許さない。
週刊誌などでスキャンダルが出ても一切驚かないし、色んなトラブルが実はあったとしてもそりゃあるだろうなとは思う。
職人になるというのは、相手に自分の命を預けるようなことだ。
小学校の教師が教え子にげんこつをお見舞いして略式起訴をされる時代である。
ちょっとしたパワハラが致命傷になっても不思議ではない時代である。
その時代に生きるものとして必要なのは、いつ辞めさせられても未練を捨て、納得できるかどうか。
いつ職人としての命を奪われても納得できるかどうか。
その覚悟があっての職人である。
これがあって厳しく指導できる人であれば人望はついてくるだろう。
だとするならば、覚悟がなくて厳しく指導する人間があまりにも多いように自分は感じる。
他人に厳しい人間ほど、未練がましい。
未練がましい人間ほど、最近の若者は怒られ慣れていないとしたり顔で言える。
その観点で指導者を見てみることをおすすめしたい。