近藤廉は高校まではどこにでもいる普通の高校球児で、出身校のOBには松田優作や竹野内豊、工藤兄弟、OGには山田まりやがいる。
なんとも守備範囲の広い卒業生たちだが、プロ野球選手は近藤廉と日根紘三の2人だけ。
日根紘三は国鉄スワローズに2年だけいた選手で、息子はSHAZNAのボーカルであるIZAM。
近藤廉について調べようとしたら、ついついWikipediaを楽しみながら読んでしまったが、本来は高校卒業で野球を辞めようとしたらしい。
その気持ちは変わり、札幌の大学に行くことになり、野球を続ける。
札幌六大学野球では勝ち星に恵まれなかったが、真っスラと呼ばれる球、150キロ近い速球が評価され、中日と育成契約を結ぶ。
育成から支配下登録されたのは意外にも早く、翌年5月には1軍デビューを果たした。
初登板はまずまずだったが、2試合目で制球が定まらず、ファームに落ちた。
元々期待され、立浪監督の初年度のキャンプでは一軍にいたが、左肩痛に襲われ、2022年シーズンはほとんど投げられず。
3試合目の登板が8月25日の横浜戦となった。
横浜6点リード、いくらなんでもセーフティリードでしょと思い、他のことをしていたら、1点2点3点と点を取っていった。
改めて振り返ると伊藤光が空振り三振を喫し、2アウト3塁の時点で2点しか入っていない。
ここまでは味方の後逸がありながらも持ち堪えていた。
守備固めに入っていた柴田にフォアボール、バウアーの代打山本祐がタイムリー、ここから様相が変わった。
ストレートが140キロを切る状態で、よほど変則的な投げ方でないと厳しい球速。
桑原には1球もストレートを投げなかったが、今度は制球が定まらず。
代走で出場し打席が回ってきた関根には全球ストレート勝負でやはり制球が定まらず。
こちらも代走で出場し打席が回ってきた林に走者一掃のタイムリー。
同じく代走で出場し打席が回ってきた西浦には初球を打たれた。
代打京田にはスライダー主体で勝負するもフォアボール。
その後伊藤光にタイムリーを打たれ、柴田にデッドボール。
山本祐は8球粘ってショートゴロ、8球のうち6球がシュート。
1イニング64球は歴代2位タイだったが、上位3人はいずれも横浜戦での記録というおまけもあった。
近藤廉はファームでの成績を見る限り、正直ピリッとした成績は残せていない。
なんで一軍に上がったのか、上げるポイントはなんだったのかというのが気になる。
140キロ前後の速球とやや遅いシュートやスライダー、フォークでは制球がよほどしっかりしていないと打たれるだろう。
その制球はファームの成績を見る限り、とてもいいとは言えない。
20日の試合で1イニングを三者凡退にしたのが評価されたのだろうか。
左肩痛を考慮し新しいフォームにしたら結果が出るようになり、それも一軍につながったのだろう。
8月でCSすら無理になるかもしれないという状況で、希望の光を見出そうとしているファンの姿が見られる。
この後に起きる惨事はだれも予想できなかった。
立浪監督が酷なことをしたと語った理由は、勝ち継投の投手を使うわけにはいかないというのが大きいだろう。
立浪監督は古い野球の価値観を持っており、フレキシブルに野手を投げさせることは頭にもなかったはずだ。
仮に野手を登板させるとして誰が候補になりえたのか、このあたりは中日を応援する方たちがわかるかもしれない。
巨人の原監督が1度野手を登板させたが、結局はその時限り。
メジャーでワンサイドゲームになれば野手を登板させるのが普通だが、日本ではまだまだ常識にはなりそうにない。
晒し投げ、懲罰など様々な言われ方をされることになったが、立浪監督は激昂せず、呆然としていたことが物語っているように感じる。
確かに直近における近藤廉のファームでの投球はまずまずな印象を受けた。
コマが足りない状況を思えば、近藤廉を上げるのはやむを得なかったかもしれない。
恐らくは降格だろうが、二軍に落としたところで再起できるだけの環境が整っているのだろうか。
ちなみに1イニングの投球の上位3人のうち、1人は1991年の巨人・斎藤雅樹、もう1人は2004年の阪神・吉野誠。
斎藤雅樹は90年代の巨人を支えたエースであり、吉野誠は主に中継ぎで300試合以上投げている。
実績のある人たちでも時にこうなるのだ。
ケガもあって真っスラが武器だった時代とは違う状況になったのかもしれない。
しかし、これでおしまいの投手とレッテルを貼ったり、過度に悲しんだりするのは違うと思う。
もうこれ以上の地獄はないのだから、あとは上がるだけ。
敵ながらも近藤廉には頑張ってほしい。
地獄を這い上がって栄光をつかむ、そんなストーリーを多くの人が望んでいる。
令和の米騒動などとしょうもないことで話題を振りまいている場合ではない。
みんな地獄にいるのだから1人でも這い上がってほしい。
暗黒時代の横浜を見過ぎたからか、そんなことを相手チームに感じた次第だ。