ウィル・スミスを激怒させたクリス・ロックは「非言語性学習障害」だった
自分もクリス・ロックの存在を初めて知り、町山智浩のTwitterや水道橋博士と行っている対談でどういう人物かを知った。
ネット上では、クリス・ロックが非言語性学習障害であることが公表され、さも今回の一件を擁護するために障害を持ち出したかのような論調が目立つ。
しかし、クリス・ロック自身は過去に非言語性学習障害であることを公表し、苦労した話をインタビューで答えている。
アスペルガー症候群ではないかと友人に言われ、検査を受けたら非言語性学習障害だったそうだ。
言葉でのコミュニケーションはできるが、それ以外のコミュニケーションに難がある。
意外と人間は言語に頼らないコミュニケーションをするそうで、言葉でのやり取り以上にその機会は多い。
またこの病気はアメリカやカナダの青少年の中で25人に1人が症状を持っているとされている。
近年日本でも発達障害が増えているそうだが、これは検査を受ける人が増えたことが大きい。
今までも発達障害はあったが、単に症状として認められなかっただけだ。
全員をチェックしたら、日本でも同じような割合で発達障害の人が出てくるかもしれない。
クリス・ロックという人は、日本だとタブー視されやすい人種問題などもネタにする。
2005年にもアカデミー賞の司会をやっていたそうだが、この時は、アカデミー賞にノミネートされた作品がいかに観られていないかをネタにしていた。
黒人ばかりがアカデミー賞の作品を見ていないと答え、白人はそれを観たと答えるという、人が人なら批判されるネタだが、これが成立してしまう。
昔、タモリが埼玉のことをダ埼玉と揶揄したことがあった。
のちに所ジョージは埼玉県が発行する広報で、田舎者ではないと強がり、見栄を張るところがダサイという内容のコメントを残している。
タモリは笑っていいともの生放送中に埼玉県庁へ電話をかけることもした。
果たして今、そんな笑いができるだろうか、そして許容されるのだろうか。
タモリ、筑紫哲也、武田鉄矢の3人が九州の県民性を語っていく番組を見たが、普通に面白かったのでぜひとも動画サイトで探して見てほしい。
クリス・ロックに話を戻すが、空気が読めないからこそ茶化すことができるという指摘に自分は膝を打った。
思えば、日本の笑いは空気を読む笑いであり、空気が読めなければ色んな人に嫌われる。
随分前だが、24時間テレビ内で復活した熱湯コマーシャルにおいて、当時クラビアアイドルだった小阪由佳がチャレンジした。
「アツアツの熱湯」を小阪由佳は耐えてみせた。
その姿を見た芸人たちは、うわぁ空気が読めないやつだ~と言わんばかりの雰囲気を醸し出す。
その後必死で熱湯の熱さがヤバい!という感じでいつものお家芸などを繰り出す。
こういう笑いが日本では許容され、安心してテレビの前で見ているのだから、クリス・ロックの存在を許容できるはずがない。
アメリカと日本のユーモアが全く相いれないことを象徴するのが、「サタデーナイトライブ」である。
大統領やセレブなどを平気でこき下ろし、笑いにしていく番組でアメリカの長寿番組。
オレたちひょうきん族はサタデーナイトライブを参考にして作ったという話もある。
2011年、日本で「サタデー・ナイト・ライブ JPN」が放送された。
フジテレビの社運、めちゃイケの威光を反映させたかのようなメンバーが揃ったまではよかった。
でも、日本で全く流行らなかったのは、アメリカ流が日本流と大きく異なっている点に尽きる。
サバイバーだって鳴り物入りで始まったが、結局短命に終わった。
ウィーケストリンクも面白かったが、性格の悪い人間が出てくることに日本人は耐えられなかった。
これはどちらが上か下かという話ではない。単なる文化の違いである。
ウィル・スミスの一件も結局文化の違いが大きい。
日本でウィル・スミス擁護の声が高まるのも納得だし、アメリカでは真逆なのも納得である。
どちらも間違っていないし、文化に照らし合わせれば自然とそうなる。
空気を読まないクリス・ロックを日本人が毛嫌いしたとしてもそれは仕方ない。
空気の読めないやつによる笑いなんか、日本人は不愉快にしか感じない。
それがKYという流行語につながる。
クリス・ロックのすごさ、歴史を語ったところで、日本人にはわかってもらえないだろう。
そんな自分も、クリス・ロックのネタを見て笑えるとは思っていない。