違和感の解剖図:勝負事とエンタメの不都合な真実

競馬、ボート、Mリーグからテレビ批評まで。世間に漂う「建前」を剥ぎ取り、その裏に潜む違和感の正体をロジカルに解剖する。単なる感想を超えた、不都合な真実の記録。


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大雪H落馬事案とJRA異議申し立て制度の形骸化|検察審査会との共通点

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大雪ハンデキャップ落馬事故とは(概要)

8月15日、札幌11Rの報知杯大雪ハンデキャップで、12番人気スマートカイロスに騎乗していた古川奈穂騎手が4コーナーで落馬し、競走中止となった。JRAは「複数の馬のわずかな動きにより前の馬に触れたことによるもの」として無制裁の裁定を下したが、X上ではこの裁定を巡って意見が割れている。

何が起きたのか

15日の札幌11R・報知杯大雪ハンデキャップ(3歳以上3勝クラス、ダート1700m)は、1番人気アイウィル(北村友一騎手)が直線で抜け出し優勝を飾った。その裏で、12番人気スマートカイロス(古川奈穂騎手、25歳=栗東・矢作厩舎)が4コーナーから最後の直線にかけて、前の馬に触れてつまずき、落馬。競走中止となった。

古川奈穂騎手はその後、競馬場内の救護室に運ばれ、頭部を打っていたためCT撮影の方針が取られ、病院へ搬送された。意識はあり、話はできる状態だったという。馬体には異状がなかったことが発表されている。

JRAの裁決とXでの反応のズレ

JRAの裁決レポートでは「4コーナーで、14番スマートカイロスの騎手が落馬する事象がありました。これは馬群が密集する中で、複数の馬のわずかな動きにより、前の馬に触れたことによるものでした。この件についての制裁はありません」としている。

この裁定に対し、X上では意見が分かれた。北村友一騎手の走行に問題はなく、むしろ別の騎手の動きに要因があったのではという見方がある一方、審議そのものが行われなかった点に納得のいかない声も見られた。

異議申し立て制度の形骸化の方がよほど問題

個人的にはあれで何かしらのペナルティを科せられる方が厳しいと思っていたので、JRAの評価が妥当だと考える。しかし、函館記念における小林美駒騎手の「ラフプレー」に対して相手の調教師が異議申し立てを行うなど、夏競馬は裁決を巡って荒れた。

www.jairs.jp

イギリスも不注意騎乗と呼ばれるものが増えている一方、フェアプレーであるべき!みたいな論調はそんなにない様子。進路をなるべく作らないようにすることも競馬の一部と調教師に言われたら、そういうものかと納得する。

大雪ハンデのケースもそれぞれギリギリの動きが重なったがゆえの落馬で、誰が悪いというものではないと思う。ちなみにイギリスの調教師曰く、もし不注意騎乗を抑えるのであれば、勝った馬に有利な判断を控えた上で、どこでアクシデントが起きたか、着差がどうかなどを考慮しないで判断した方がいいという持論を述べている。

一方で、諸外国では異議申し立て制度が機能しており、当初の処分が軽減されるケースもある。それを見越してラフプレーでもいいから勝ちに行くケースがあるという。日本は異議申し立て制度が形骸化しており、ひっくり返ったケースはゼロだ。

それもそのはず、裁決を行うのはJRAの職員だからだ。競馬に限らず、お役所の人が非を認めること自体、ほとんどない。あっても裁判で負けた時ぐらいだろう。自主的に間違いを認めるなんて、できるはずがない。

ちなみに裁定委員会には外部委員がおり、岡部幸雄、桑島孝春といった中央地方の名手が在籍し、田所秀孝元調教師や地方競馬の公正部長の4人が名を連ねる。ただあくまでも外部委員で、JRA側は副理事長に常務理事、審判部長、美浦や栗東のトレセンの各公正室長などが参加する。外部理事の発言力がさほどないことはなんとなく想像がつく。

もしも諸外国ぐらいに異議申し立て制度が機能していれば、もう少し前向きな議論がなされるだろう。現状は感情論優先で、どう乗るべきだったかが全く出てこない。ゆえに変な正義感を身にまとい、声が大きい人間の意見がネットの世論を誘導していくことになる。

司法制度ですら異議申し立てはなかなか通らない

話はズレるが、検察でも無罪の可能性がある場合、起訴不起訴の段階で不起訴を選ぶことが目立つ。有罪確率99.9%と言われているが、起訴率は4割にも満たない。起訴より起訴猶予が多いのも特徴的だ。また不起訴のうち、嫌疑なしや嫌疑不十分のケースは2割ほど。

ちなみに起訴猶予制度は、明治18年に監獄の経費増大を防ぐ目的で、微罪は謙虚しないという訓令がベースとなっているらしい。

不起訴となった場合、検察審議会に申し立てを行えばひっくり返る可能性がある。平成28年では2200件ほどの申し立てがあったが、起訴相当はたった3件、不起訴不当も100件ほどで、そのほとんどは不起訴相当である。JRAの異議申し立て制度でひっくり返るのは検察審議会で起訴相当が出るくらい難しいと言える。

一方、だいたい2000件前後の申し立てがある中、平成5年にはなんと4万件の申し立てがあった。そのほとんどが政治資金規正法違反によるもの。起訴相当・不起訴不当の判断がなされたのはそのうち1万件と割合は多め。しかし、その中で起訴されたのは18人しかおらず、起訴率0.2%。

検察審査会の審査員は11人の市民によって構成されるが、検察の捜査記録や申立人が出した資料などを踏まえて判断するため、検察が出した判断だからなぁ…と考える人が多くても不思議ではない。

強制起訴されたケースは2009年以降11件あるが、有罪はわずか3件。大量の申し立ての末に不起訴から有罪に転じたのはたった3件。JRAの異議申し立て制度と比較するのは違うとは思うが、この感覚で考えたら、申し立てを行うのもバカバカしくなる。

もちろん何千件と申し立てがあればもしかしたらひっくり返るかもしれないが、仮に数十年で累計数千件の異議申し立てが競馬で起きたら、その手前で問題視されそうだ。


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